Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
それもあろうが、折から雲清寺の夕桜もさかりだった。
忠顕はその一ト枝に歌を添えて、お部屋へささげた。後醍醐も彼へ“返し”の歌をお詠みになるなど、久しぶり、夜のお枕も、花の香の中だった。
朝。ここの朝桜もまたきれいだった。とはいえ、馬のいななきやら人声が早や騒々と朝の立ち支度を告げているので、廉子は、雲清寺の縁へ出て、
「道誉」
と、彼の姿を捜していた。
「やあ、召されましたか」
「オ、道誉、ちと約束がちごうてはいませぬか」
「はて、異な仰せを」
「途々では、院ノ庄へ着いたなら、かならず両三日のご休養を……と、まいど申していたではないかの」
「されば、ここはもう皿山ぢかくではございますが、院ノ庄ではありません。院ノ庄とは、ここから西へ二里ほどの先」
「では、こよいのご宿所は」
「その院ノ庄です。……いやそれゆえの、ご不審でしたか。……何の何の、今日は昨日と違い、雷鳴り雲も見えませぬゆえ、その二里ほどを、桜狩りしつつまいろうとの心ぐみにござります」
「おうそのような、優しい計らいであったのか」
廉子はよろこんだ。それがそのまま、帝の仮の御座へ奏上される有様を胸にえがきながら、道誉もべつに秘かな満足を自己に感じている。