Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

「玄蕃、待て」

「は。何ぞ」

「いや、わしが納屋へ行こう。そしてな玄蕃、これはそちだけに申しつける。誰をも納屋へ近づけてはならん。……また、書院の燭は消して、道誉は早や寝についた態にいたしておけよ」

「承知いたしました」

「これは極秘だ。主人から極秘の命をうけるのは、きさまにとって冥加だろうが。たれにも口は割るまいぞ」

にやと、道誉の顔の黒子が笑った。それには反くことの出来ない無言の威圧を感じるのは、腹心の黄母衣の者すべてで、ひとり玄蕃だけが主人に小心だったわけではない。

道誉の影は、荒れ庭のすみに見える低い土倉の口へ呑まれるように消えていた。

夜明けがたの院ノ庄は、きのう以上な馬数や兵で埋まっていた。船坂に殿軍した千葉ノ介の一隊も今暁、ひきあげて来たものらしい。その上、

「きょう一日は旅も休みぞ」

と、行宮のお湯殿には、朝からの湯けむりも暢びやかだった。なによりは、妃たちにすれば、

「……髪も洗える」

そのことすらが、よろこびだった。

いつか、都を出てから二十日に近い。もし内裏なら、今ごろは、藤の花の匂う弘徽殿ノ渡殿にこの黒髪もさやかであろうと思うにつけ、妃たちは、粘い汚れ髪に触ってみては、女同士で、