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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

五月の爽涼だ、夜明けも早い。

東国勢には、伝統的に馬自慢の武士が多いのである。暁の下に彼らは遠い祖先の宇治川先陣を、今朝の自分に擬しながら、もう汀から白波をあげて、大河のうちへ馬首をすすめていた。

きれいである、血を見ぬうちは、うごく絵巻のように美しい。

だが、水馬の馬陣が、矢ごろの距離に入るやいな、

「あッ。――」

もう泡沫の中に覆されて、たちまち浮きつ沈みつ流されてゆく武者の影が続出していた。

「伏せろ」

「馬筏を崩すな」

「よろいの袖を深く翳せ」

まるで、夕立のような矢の中だった。多くは、眼をつぶっていたのである。かぶとの脳天には何度となく鏃がカンと刎ね辷ッた。

「よしっ」

頃を見ていた隅田勢は、鉦を鳴らして橋上を駈け出した。ほとんど、この方へは、いくらの矢風も吹かないうちに、はや北詰からも迫って来た楠木勢と、橋の真ン中で白兵戦になっていた。こう敵味方、顔を見合って、吠えあう段になると、装備にすきのない六波羅勢に、いやおうなしの強味がみえた。――楠木勢の先鋒といえば、そのあらかたが、日傭兵といってもよい、半裸同様な軽装に、ただ大刀や長柄を振り廻すものが多かったのだ。