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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme

Aozora Bunko

彼のよろい具足は、お抱えの明珍に図案させ、縅から彫金のかな具一ツまで、粋を凝らしめたものである。それをいま彼は着ていた。しかし自分の好みといえ、それは工芸家の技術を見たいために作らせたもので、かかる日の実用に着るのは、彼の本意でない。――だから昼寝の汗を拭くだにも、この窮屈な物が、小癪にさわるらしかった。

「新右衛門っ」

近習の長崎新右衛門を見て。

「はやく汗拭いを持てまいらんか。なにしておる」

「は。いま、ごさいそくを申しやりました」

「いまごろか」

そのすきに、伊具越前ノ前司宗有が、横から注意をうながした。

「太守。……」

「伊具か。なんだ」

「戦場からのご急使が、さいぜんより、お目ざめをお待ちしておりますが」

「どこに」

あらためて、寝ざめの目をさまよわすほど、周囲は武臣の姿で埋まっていた。いまやこの表小御所は陣営中の陣営だった。いわば死か生かの、鎌倉さいごの命脈を支配している心臓部なのである。

見ると、二名の血まみれな武士が庭前にぬかずいていた。その背に、午後の陽が直射していた。ひとりの方は虫の息らしく力がない。身じろぎもしないので血に蠅の群れがたかっていた。