Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
そしては海嘯のような武者声がまた、わああっと沸く。
それも、乱打の陣鉦や矢うなりは今朝から聞えず、ただ人間の吠えと叫喚ばかりだった。すでに合戦は、街なかの辻々に圧縮され、いずこも肉闘の白兵戦となってきた証拠であろう。そして寄手は、浜辺と山の手から、北条勢のことごとくを、市街のなかへ追い込んで、鎌倉じゅうの殿舎、諸屋敷、寺院、町屋のすべてを薪木とし、四方から蒸し殺しに焼き亡ぼそうとするものらしい。
「ちいっ」
高時は、しばしば、床几をはなれて、東勝寺の広前を、檻の中みたいに歩いた。
「畜生」
青白い顔だった。その白さも、くらべる物のない白さである。眸はいよいよ鋭く、
「崇顕。……金沢の爺。爺はいないか」
と、急に、何か不安にかられ出したように、呼びたてた。
「太守。……崇顕はこれにおりまする」
「オ。金沢の爺。あれを見い、あの炎を」
高時は、扇ヶ谷の方をさして。
「いま燃えさかッている所は、ちょうど二位ノ局(高時の愛妾)の家あたりではないか」
「まことに」
崇顕はその老眼をしばたたいて、あと何もいえなかった。
「爺っ」
「は」
「ほかの局とちごうて、二位の手もとには、わしとの仲の幼い者がふたりいる」