Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「お近づきなされますな。咬みつきたがる病人でございまする」
「なに」
「もう咬まれたら、犬神憑きが、あなた様へもうつりますぞ。狂い出したらどうもなりませぬ。かまわんでおいて下され」
「うそを申せ」
翁は腰をついた。師氏の手がもう蓑をつかんで刎ねのけていたのである。
女は小娘だった。十六、七。眉目や身なりからみても北条一族の奥にでも仕えていた小女房か何ぞにちがいない。――しかも、師氏を見上げた眸は、敵意にみちている目であった。
「師氏」
と、和氏が後ろで言った。
「……手荒にするな」
「手荒になどはいたしませぬ」
小女房はそれでやや安心したらしくはあるが、何を問われても、翁同様、答えもしない。けれど師氏がよく諭すと、だんだん、この二人だけは近ごろ鎌倉じゅうで女漁りや掠奪を事としている乱暴な武士とは違うことが分って来たらしく、ついにはサメザメと泣き出して、やっとその身の上を語り出した。
戦火で焼けるその日まで、扇ヶ谷の二位どの御所(高時の側室)に仕えていた小女房の棗というものです……と、たえ入りそうな声でいった。
「棗というか」
「はい」
「いくさもすんだのに、なんでこんな浜小屋に隠れているのか」