Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
つまりは骨の髄までの古兵学の権化なのだ。獄にいても、彼は日夜、退屈は知らないのである。朝夕、身近に来る雑武者から全戦場のいろんなことを聞きほじっていた。足利の叛旗もすでに知っている。そして夜来異常な六波羅中の空気から、今日の危機までよくその膚で感知していた。
また、たびたび彼が探題へ面会を求めていたのも事実である。抑えようもなく胸中に湧いてくる必勝の策を、たんなる兵理でなしに実戦に行わせてみたいからだった。官軍賊軍、いずれが、どうだというのでもない。ただそれだけのことなのである。しかしそれは彼の千載一遇であり彼のたましいを燃やすに足るものではあった。
「探題、探題……。聞いておるのか」
「む、聞いておる」
「ちと、手おくれだが、ここを三日ささえ得れば、六波羅はかならず保つ。おそくはない、手配をいそげ」
「どう、いそぐ」
「わずか千早の城一つに、去年いらい、関東二万余騎を金剛山の下に釘づけにされているなどは、愚の骨頂だ。六波羅の一令にて、なぜこれへ呼び返さぬか」
「…………」
「いや、楠木が暴れ出よう、追討ちかけよう。また寄手の十二大将、阿曾、金沢、大仏、淡河、二階堂道蘊などは、みな北条歴々の大将ゆえ、指令に従わぬとでもいう惧れか」