Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「良忠、そちはなぜ彼を、きらったのか。正成には何か心をゆるせぬ疑いでもあってなのか」
と、訊いていた。
「いえ決して――」と殿ノ法印は猪首をかがめ。「さような河内殿とは思いませぬ。なれど余りに真っすぐな田舎武人」
「どうも、そちとは前々からちとソリが合わん風だの」
「なかなか」
と、法印は笑いはぐらした。
「個人としては、世にめずらしき河内殿と、とくより尊敬しておりまする。なれどその楠木も、土豪の雄でこそあれ、中央の賢ではありませぬ。廟堂のご政治むきなどには、とんと役にもたたぬ者と、記録所や決断所でもはや定評となっております」
「あの風貌は殿上でもだいぶ損していような。口かずも多くはきかず、いつも片目まばゆげに、沈湎と坐っているとか。それでは錚々たる列臣のあいだにあっては、なお精彩がないはずだ」
「しぜん、腹のわからぬ者だという蔭口もございまする。したがこの良忠は、笠置、赤坂、千早など、多年にわたって見てまいりましたゆえ、さような人物とは疑いませぬ。むしろその寡黙や沈剛の風を愛するのではございますが、どうもその……融通がききません。世事にはくらく、信じると曲げず、そのうえ無口ときているので、従来、楠木との談合だと、こちらがいらいらする例は一再ならずでありました」