Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
それとも何か尊氏へ、お心のものでも下さるか」
「お求めなれば」
「ご辺へ望むなら、欲しいものはたくさんある。だが、昨夜のことに関ずらうのはやめにしたい。おたがい武門。狭量な輩、御しにくい猛者、いろんなのがたくさんいる。それらも飼っておかねばならん。わけて小六とやらは、なかなか主人思いと見うけ申した。可愛がっておあげなさい。何かのとき役に立つ」
「いよいよ、冷汗のほかございません。小六も申しおりました」
「なんと」
「命は助けられたが、足利殿は測り難い。いちばい、おそろしいお人と見うけ申したと」
「そこで、なおさら、この尊氏を失わねば、心も安まらぬと申してはいませんでしたか」
「…………」
正成がなんと答えるかを待つような尊氏の眼ざしだった。すると正成は、はじめて、唇のあたりに微苦笑をみせた。
「仰っしゃるとおりです。なんとも頑迷な奴で、私の前でもなお、誓ってお命をいただくと、吠えおりました」
いくら歯に衣きせぬ正成のことばとしても、真剣となって聞くには、正直な言い方すぎる。返辞にこまる。
「…………」
黙っているしかなく、尊氏は黙って、正成の顔を見ていた。
正成の右の瞼にかすかな痣ともいえないほどなひッつれがある。