Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「ぜひ」
と、正成は言って。
「くれぐれ、宮将軍とのおわだかまりが、解けますように」
「仰っしゃったな。すべては誤解だと」
「誤解にすぎませぬ」
「そうかな」
「相互の誤解です。微力ではありますが、宮へは、正成が畢生の思いをこめて、いちどは、何といたせ、ご諫言申しあげる所存でおざる。なにとぞ、あなたさまにおかれても」
「尊氏は臣下」
「でも、ここは、何事もおしのび給わって」
「さまでにご心配か」
「累卵の危うさを見ているようです。ひとたびまたの変でも生じましては、せっかくな御世初めも」
「気をつけよう。六月七日のようなこともある」
「二度とあってはなりませぬ」
「王政の中興を、可惜にしてはならんとのお祈りか」
「もちろんです。みかどが、笠置籠城のせつ、正成へくだし賜わった勅のおことばは、正成の心となって、一族どもにもそのたましいを打ちこみました。いまも変っておりませぬ」
尊氏は、ふっと、目の前の恋人を失ったような気がした。いつか衛府の門へ来ていた。で、別れかけると、正成は、物騒な夜中、おひとりの帰館はこころもとない、たって自分の部下をもって、お送りしよう、と言い出した。
つい昨夜、楠木の郎党に危うく命を奪われかけている尊氏だ。