Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
無心な燭すら、消えなんとする風には抗して必死にまたたきつづけていた。
「迎えとな。では、朝夕ついていた番の武者でもないのか」
「ではござりませぬ」
「ならば、どこの何者だ」
「奥羽のさむらい、淵辺伊賀守義博と申しまする」
「あるじは」
「は」
「いやさ、そちの仕えるあるじは」
「…………」
淵辺はもとよりそれを明かす気もないし、こんな問答は心にもないことだった。蟇のごとき姿態のうちにあぶらをたらして野蛮な勇を用意しながら、身に寸鉄もおびられてはいぬ宮の白いお姿を、上眼づかいに窺うほかの念慮ではない。
その眼に。
いやそれと、武者臭ともいえる彼の体から発しる汗くささに交って酒のにおいがふとしてきたので、宮はとたんに、理知のかけらもない兇暴な生き物との対決を否みようなくはッとさとって。
「うそを申せッ。そちはこの護良を殺害しに参ったな。迎えなどではあるまいが」
宮の一喝に、淵辺は躍りかけた身じろぎを、せつな逆に、居すくめて、
「いや、いいや」
と吃りに吃った。
「さ、さにはございませぬ。主君のおいいつけ、もだしがたく」
「とは、何用あって……」
「畏れ多けれど、宮をあの世へお送りし奉れと申しつかり、ぜひなく推参いたしてござりまする」