Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
そのあたりで、宰相の有光、勧修寺の中納言などが、仲時をよんでいた。なにかおいそぎな上意でもあるらしかった。
山小屋の蚤虱やら、夜風の音も御不安のせいか、後伏見といえ花園のきみも、夜すがら、お寝みのていもないような――と、公卿たちは言って。
「ただいま、その両院からの、仰せ出しじゃが」
と、仲時へ諮って言った。
仲時はつつしんで。
「何事にございましょうか?」
「仰せには、こうして晨を待つよりは、いっそ夜明けぬまに峠を越えて、柏原へ急いではとのおことばだが」
「それがかなえば、それにこしたことはございませぬ。したが、賊の出方によりますこと。われら武者どもは、どうにでも、血路を開いて通りますが、みかどを初め、足弱な女房がたもおられましては」
「しかし、昨夜はどこも静か。賊とて、いうほどな大群ではないのであろ」
「いや、わざと鳴りをひそめているものと思われます。そのうち伊吹の佐々木道誉もお迎えに出て、後からは六角時信がお供に追ッついてまいりましょう。ま、いましばし、ここにご辛抱を」
仲時はなだめた。
彼にすれば、落人のままならぬ身でさえあるに、宮廷そのものを背負って行くにひとしいような重さであったことだろう。