Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
も、一陣のくずれが、二陣三陣のくずれをよび、ついには収拾もつかない大混乱をみずから招いてしまったものとおもわれる。
偶然ではあろうが。和泉国の松尾寺では、かねがね北条退治の如意輪ノ法を修していたところ、ちょうどその満願にあたる日に、千早の囲みが解けたと、その「松尾寺文書」は仏徳を誌している。事の真偽はともかく、摂、河、泉いったいの潜伏勢力が、いかに鎌倉勢の破綻を窺っていたかは、これらの例にみてもわかる気がする。
そして、時の芽ぶきを待ちつつ、近国近郡のひろい山野にその気運を鬱然と萌え出させた原動力は千早であった。千早に拠って、よく今日までを耐えてきた超人的な人々の力であった。
「やっ?」
城のやぐらで誰か叫んだ。
そのとき、物見山のとりでの方でも、
「おうっ、ただごとでない」
「寄手の内に何かがある」
「何か起った!」
と、異様な昂奮をみせていたが、たちまち楠木正季と二、三の将が、坂道を駈けくだって、正成のいる三の曲輪の方へと、
「兄上、兄上っ。お気づきですか。麓の方を」
喘ぎのぼって行くのも見える。
はや、正成のすがたも大勢にかこまれて、やぐらの上に立っていた。