Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
「自分ですら思いがけぬ身の移ろい。お分りでございましょうか」
「もしやその昔の、小右京さまでございませぬか」
「おお、その小右京でございまする。双ヶ岡の法師のおすすめやら、いまは亡き草心尼さまの、たってのおことばで……」
「やれやれ、それは覚一さまにはまたなき良い御内助。草心尼さまも、御自分に代るお方を得て、さぞ安心して世を終られたことでございましょう」
「いいえ、倖せなのは私でした。おかげで、それからの月日は」
「とかく世の女性が世の荒波に負けて、ややもすれば尼の門に髪をおろしてしまう様を、兼好法師は、世にもあじけなきことと、いたく嫌うておられましたな。法師の心も酌めますわえ」
このとき初めて、覚一も。
「右馬介か。久しいのう」
「これは覚一さまで。ああ、お立派になられましたなあ。かつは、目あきでも成し得ぬお仕事をこの大乱の世に果して」
「それもこの目の盲がさせてくれたのだ。目が見えぬゆえ人皆の欲しがる物に思いをわずらわされずに。……して、お辺は湊川合戦の後は、どこに?」
「は。今は何もかもお話し申しあげる時と存じまする」
と、右馬介はこう話した。
――正成の首級を故郷の遺族にとどけてやれと尊氏から命ぜられたとき、彼は自分の奉公もこれまでと弓矢も思い断っていた。