Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
「虫干しだ。――よろい櫃やら矢束やら。イヤ、持ち出してみると、思いのほか、少ないものよ」
「何の、これだけの御陣具があれば、二百の兵は賄えまする」
「いや常に、五百ほどな用意はと、心がけるのだが、虫蝕いやカビにさせぬだけでも、骨が折れるわ」
「はははは。ここでは、武器のお風入れ。水分では雨のお祈り。これでは、旱の太陽も、どっちへ加担してよいやら、迷うわけでおざりますわい」
「兄上にはいうな。お気をわるくなされよう。……そうだ、爺、よい所へ来てくれた」
急に、彼は、“虫干幕”の外へ足をはこび始めた。
そこらの莚には、弓師、皮縫工、飾師などが手入れ仕事に他念もない。で、他聞を避けるお心だろう。爺の左近はそう察しながら尾いて行った。――だが、その二人の背を、具足師の柳斎だけは、すでになにかを感じたように振向いていた。ふと、そんなときの柳斎の眼ざしには、ほかの工匠らにはない底光りがあった。
――はて。どこまで連れておいでなのか?
左近の白い眉がいぶかりを持ち出したとき、ようやく、正季は足をとめた。そして、林の中の小道から庭ごしを指していた。
「爺。……あれに見ゆる女子を知っていようが」