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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

と。二人の話の途切れに……すぐ近くの杭の繋り舟の苫から、またしても、さっきの甲だかい赤子の泣き声が、水谺をよんでいた。

「ち。よく泣かせるナ」

菊王は舌打ちして。

「わが殿にも、いまのまに少しなと、うとうと手枕でもしておかれねば、お疲れが癒えますまいに」

「泣く子はぜひもない。まして人の子」

「どこか、繋綱をよそへ移しましょうか」

「それはいいが、大丈夫か、辺りの様子は」

「ここだけでなく、ほかにも人影のない岸はありましょう。……あれ、またヒイヒイと、ひきつけそうな泣き狂いだ。これや、いけない」

艫へ這い出て、菊王は、もやいを解いた。そして舟を突きかけると、ゆるい波紋が、隣の苫舟の暗い灯までを少しゆるがせ、そこの舟べりから、

「……もし」

と若い男が、縋るような声音でこなたへ呼びかけた。

「見ず知らずのお方へ、とんだ御無心でございますが、よんどころなく、病人と赤子をおいて、ちょっと街まで一ト走り行って来たいのでございます。何とも恐れいりますが、その間、ここの苫を、見ていていただけますまいか。すぐに戻ってまいりますゆえ」

「さあ? ……」と、菊王には、生返辞しか出なかった。