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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

「が、まア、こんな窮屈なご辛抱も、せいぜいが今年いッぱい。いや、悪くすれば、今年うちにも、世間はどうなるか知れたもんじゃありませんよ」

「えっ、何ぞまた、世の騒ぎでも起りそうなのでございますか」

茶をいれていた卯木が、ふと振り向いて訊ねると、柳斎は、笑いに紛らせて。

「いやいや、何が起っても、ここは大丈夫ですよ。逆に、長屋の衆の仕事は、繁昌するばかりだ。……そうそう、その商売で思い出したが」

それが今日の、じつの用向きであったようだ。彼は、ここで急にことばをかえて、数日の留守を、夫婦に告げた。

さる領家から、かなりな量の註文が出そうなので、丹波まで行って来たい。大急ぎで帰って来るつもりだが、京のとくい先も廻って来たいし、ひょっとしたら、半月程にもなるかもしれぬ。家事を任せてある婆やは、耳が遠いし、何ぶん留守を頼むというのであった。

柳斎の留守中は、いや柳斎がいてもいなくてもである。日ごろ、店の帳合いから下職長屋の仕事の振り分けなど一切は、手代の鳶七が切り廻していた。

この男には、

禿鳶さん、という綽名もある。

鍛冶屋出なので、子供の頃、ふいごの火土に転んで、片鬢そッくり焼けただらしてしまったとかいう顔を、肥満した体躯に載ッけて、よくガミガミ下職をどなっている五十ぢかい男なのだ。