Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

「お夫婦は、どの辺です?」

と訊ねていた。

卯木と元成の姿は、はや松と白砂の一角に、しょんぼり、小さくなりかけている。その方角を母に教えられると、覚一は舷から伸び上がって、その円い頭を、何べんとなく、ただくり返し下げていた。

追い風だった。舟は難波ノ津(大阪)の平沙や芦やまばら屋根を横に見つつ、まだ午まえも早目に、長柄の河口に着いていた。

「……覚一や。これ覚一」

覚一は舟べりにもたれて、すッかり眠りこんでいた。

「これからですよ、乗りかえて、淀を溯るのは」

やっと揺り起して、尼は、この大きな赤ン坊みたいな盲子の手を曳き曳き、乗合客のいちばん後から板を渡った。

そして、川添い町を少し行くと、べつな舟待ち小屋がある。京へ行く淀川舟の舟着きだった。

「おや、今日は……?」

いつになく、人が見えない。

附近の腰かけ茶屋で訊いてみると、これも、おとといからの洛中の騒乱のせいだとある。

都は火が消えたようだし、こんどは合戦になるンじゃないかと、物騒な噂ばかりだ。しかし、ほんとの状況は、皆目たれにもわかっていない。それだけに、人の恐怖も深まって、旅客から物売りの足まで、こんなに寂れを見せているのだという。