Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
みかどは、そこへ伺侯した宣房に、はっとされた御容子で、
「宣房。何かあったのか」
と、先に問われた。
そして、日野俊基が宮門内から曳かれたことをお聞きになると、みるみる御激昂のいろが龍顔をおおっていた。
「あるまじき処置」
ぶすと、お口のうちだった。
幕府への御憎悪は年久しいが、今ほどな天皇のおん眼じりを、宣房も見たことがない。悲涙にただれていらッしゃる。――が、それに耐えんとなされるらしく、じいっと、閉じておいでだった。
「宣房」
「は」
「俊基の捕われは、二度目だの。正中ノ変の折と」
「再度の獄でござりまする」
「よも、このたびは助かるまい」
「……おそらくは」
「さぞ、無念であったろうに。……内裏のついそこまでは、まいっていながら」
「いくたびか、お座所の方を振り向きつつ、曳かれて行ったと申すことです」
「さもあろう。なにか、言ったか」
「二度ほど、声振りしぼッておりましたそうな。ひと言、大納言殿(吉田定房)に物申さぬこそ恨みなれ、と」
「…………」
寵姫の三位ノ局廉子も、吉田定房の名を聞くのさえ、「裏切り者」への蔑みと「密告者」という憎しみに、身も焦くような黛をちらと、みかどへ、して見せた。