Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
知らぬとはいわさんぞ。おなじ洲に夜泊りしていたもう一艘にいた者を、どこへ逃がした。……さ、それをいえ」
「…………」
「それさえ、素直に白状いたすなら、ここはすぐ解いて帰してやる。さもなくば、夫婦とも、六波羅ノ庁まで差し立てて、白洲の糺問を受けねばならんぞ」
「ゆめ、何も存じません。……私は、舟底に乳児を抱いて寝ておりましたし、良人がどこへ行きましたやら」
「よしっ」
鬼六の舌打ちは、憎悪に変ってきた。急に、ぎらぎらした眼で、辺りの兵を見まわしながら呟いた。
「あとの人数は、まだ雨露次をこれへ曳いて見えぬな。彼奴を縛めて来たら、夫婦を莚に並べて、泥を吐かしてくれる。――その間、赤子を添えて、観音堂の裏縁にでも繋いでおけ」
この朝。
部将としての彼には、なお他方面に、火急な事態をひかえてでもいたのか、言いのこすやいな、部下をひきつれ、藤井寺から古市の出屋敷の方へ向って、馬を飛ばして行った。
その藤井寺へ、雨露次が曳かれて来たのは、すぐあとだった。もちろん、卯木とは、べつな所に監禁された。またなぜか、その日も、次の日も、夫婦は吟味の莚に曳き出されもしなかった。