Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

「どれや、拝見」

法師は、扇へ、ちょっと礼をしてから見た。

世のなかの

女にしあれば

吾が渡る

痛足の川を

わたりかねめや

「オ、これは当所の、痛足川を歌うた万葉の一首。歌の心に寄せて、と小書きがあってもよかったな。……さて、わしの番か。その筆、貸して給われい」

法師も、べつな扇へ、さらと、何やら書いて、返した。

「……あっ?」

何気なく、受けた扇は、はッと、蝶が羽ばたくように彼女の手で慄えをみせた。そして、良人の扇折りの机へ擦り寄るなり、夫婦は、しびれたように、二つの顔を寄せ合って、扇の文字に、一とき、息も絶えたような容子であった。

久しく都に見失ひける服部ノ元成と卯木となんいひける者の、

変り果てたる姿を、長谷のあたりに、ふと見いだしければ

と、前書きがあって――

籠口(古き地名)の

初瀬の山の山際に

いざよふ雲は

妹にかもあらぬ

と、万葉集のうちの一歌が書いてあったのだった。

しばらくしてから。

扇折りの夫婦も、やっと心に平調をとり戻したらしい。姿を並べて――、といっても、さも肩身がせまいもののように、旅法師の前へ出て手をつかえた。

「失礼ですが、一体、どなたでいらっしゃいましょうか。