Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

Lesen Sie 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.829 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

「異状はないか?」

兵隊の運転したサイドカーに乗って来た日本軍の将校が英語で声をかけた。

「は、異状はありません」

印度人の巡警がこたえた。

「よし、ご苦労」

オートバイの爆音が、直ぐ雨の中に消えて行った。

それから間もなく、

「誰か!」

と、インド人の巡警が闇をすかしてどなった。

町角を急いで例の「香山飯店」のある路地へ曲ろうとする人影を見かけたからだ。

まっ黒い雨合羽を、頭からすっぽりと被った、二人の人影である。

よく見ると、一つは大きく、一つは小さかった。

呼び止められたのが聞えたのか、聞えないのか、足早に路地の角を曲りかけている。

「こら!」

追いすがってどなると、二人の人影がやっと立止った。

「どこへ行く!」

「へえ」

「どこへ行くんだ」

「………」

「こっちへ来い」

弱々しい色をなげた街路灯が町角に立っていた。

ぶつくさ不平をいいながらも、近付いて来たのを見ると、一人は、人相のあまりよくない図体の大きな支那人で、渋紙のような顔に、あぶらが、気持の悪いほどぎらぎらと浮いていた。

もう一人の小さい方は、だぶだぶの合羽を着ているので、顔はよく見えなかったが、体の恰好で、どうやら子供のようだった。