Japanische Klassiker mit Furigana
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けいば
競馬
織田 作之助
Lesen Sie 競馬 (けいば) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.134 Zeichen · 24 Bildschirme
未産婦で乳癌になるひとは珍らしいと、医者も不思議がっていた。入院して乳房を切り取ってもらった。退院まで四十日も掛り、その後もレントゲンとラジウムを掛けに通ったので、教師をしていた間けちけちと蓄めていた貯金もすっかり心細くなってしまい、寺田は大学時代の旧師に泣きついて、史学雑誌の編輯の仕事を世話してもらった。ところが、一代は退院後二月ばかりたつとこんどは下腹の激痛を訴え出した。寺田は夜通し撫ぜてやったが、痛みは消えず、しまいには油汗をタラタラ流して、痛い痛いと転げ廻った。再発した癌が子宮へ廻っていたのだ。しかし医者は入院する必要はないと言う。ラジウムを掛けに通うだけでいいが、しかし通うのが苦痛で堪え切れないのなら、無理に通わなくてもいいという。その言葉の裏は、死の宣告だった。癌の再発は治らぬものとされているのだ。余り打たぬようにと、医者は寺田の手に鎮痛剤のロンパンを渡した。モルヒネが少量はいっているらしかった。死ぬときまった人間ならもうモルヒネ中毒の惧れもないはずだのに、あまり打たぬようにと注意するところを見れば、万に一つ治る奇蹟があるのだろうかと、寺田は希望を捨てず、日頃けちくさい男だのに新聞広告で見た高価な短波治療機を取り寄せたり、枇杷の葉療法の機械を神戸まで買いに行ったりした。