Japanische Klassiker mit Furigana
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そこつひょうばんき
粗忽評判記
山本 周五郎
Lesen Sie 粗忽評判記 (そこつひょうばんき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.942 Zeichen · 28 Bildschirme
にやにや笑って立つまではいかにも落着いたものだが、肝心の物を間違えている。当人も気がつかないし壱岐守は元より大いにせきこんでいるので、すぐに駒箱を明けながら、「許す、先手で参れ」「それはなりません。先手は下手なほうが取るもので、お上と拙者とでは段が違います」「余の命令じゃ、先手で参れ」「御意なればやむを得ません、では――」久之進はしぶしぶ駒箱の中へ手を入れた。
ここで気がつくかと思うと気がつかない。指先で駒を弄りながらはてなと考えだした。碁は打つもの、将棋は並べて指すものである。駒と石とが違っているから摘んではみたが具合が変なのはあたりまえだ。壱岐守も駒を捻っていたが久之進のようすを見てこいつまた何か失策たなと思った。粗忽人の癖としてこうなると『失策た』という考えだけに突当って他のことは忘れてしまう、しばらく無言のまま駒を弄りまわしていたがついに壱岐守が取って付けたように笑いだした。
「どうだ、久之進、え――どうだ」
何がどうなのか分らない、ところが久之進のほうもまたひどく恐縮したようすで、
「いや、どうも、まことにどうも」
「あははは、どうだ久之進、どうだ、どうだ、あははは」