Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
人は、部屋の中を彼方へ逃げ此方へ逃げして歩き廻った。蜂は三人を嬲るかのように、幸子たちが逃げる方へ逃げる方へと附いて行くので、三人がわあわあ云いながら廊下へ跳び出すと、蜂も跡を追って出た。
「あ、来たで来たで」
わあッ、わあッと云う声を挙げて、廊下から食堂へ、食堂から応接間へと駈け込んで来たので、ローゼマリーと飯事をしていた悦子がびっくりして、
「何やねん、お母ちゃん」
と云っている途端に、又ぶうんと来て、窓硝子に打つかった。
「あ、来たわ来たわ」
今度はローゼマリーに悦子までが面白半分それに加わった。五人は蜂と鬼ごっこでもしているように、きゃッきゃッと云いながら室内を逃げ廻ったが、蜂は一層その騒ぎに興奮させられて狼狽えるのか、それともそう云う習性があるのか、庭へ飛び去りそうにしては又舞い戻って追って来る。五人は又食堂から廊下を通って六畳へ駈け込む。そんな風に家中を行ったり来たりして揉みに揉んでいるところへ、
「何やねん、あの騒ぎは」
と、ひょっこり板倉が勝手口から這入って来て、台所と廊下の境界の暖簾の間から首を出した。今日も海へ誘い出すつもりと見えて、海水着の上に浴衣を着、海水帽を被って手拭を襟に巻き着けていた。