Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
うち、あかんわ、流されるわ、―――ちょっとの間辛抱しなさい、放したらあきませんで、しっかりそこに掴まってなさい、―――云いながら板倉は、激流と闘いつつ藤棚の上へ攀じ登った。そして藤蔓を押し分けて、棚の一部分に穴を開けて、そこから下へ両手を伸ばして、妙子を棚の上へ引っ張り上げた。
先ず自分だけは助かった、―――妙子が咄嗟に感じたことはそれであった。今に棚の上まで水が来ないとは限らないけれども、此処からなら屋根の方へも逃げられるし、どんなことがあっても板倉が何とかしてくれよう。―――彼女は今まで狭い一室の中でいていたので、外部の変化は想像もし得なかったのであるが、その時始めて棚の上に立って、さっきから僅々一二時間の間に如何なる現象が起ったのかを明瞭に看取したのであった。彼女がその時見たものは、あの貞之助が田中の小川の鉄橋を越えたあたりで、省線の線路の上から見たところの「海のような」景観と、恐らく同一のものであったろう。ただ貞之助の場合にはその海を東の岸から展望したのであるが、妙子はその海の殆ど真ん中に立って、四方を取り巻く怒濤を見渡した訳であった。彼女は今しがた助かったと思ったばかりであるが、荒れ狂う自然の猛威を見ては、助かったのは一時のことで、結局助からないのではないか、自分も板倉も、どうしたらこの水の包囲