Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たんでき

耽溺

岩野 泡鳴

Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme

Aozora Bunko

「お父さんの風ッたら、ありゃアしない」お袋がこう言うと、

「おりゃアいつも無礼講で通っているから」と、おやじはにやりと赤い歯ぐきまで出して笑った。

「どうか、おくずしなさい。御遠慮なく」と、僕はまず膝をくずした。

「お父さんは」と、お袋はかえって無遠慮に言った、「まァ、下駄職に生れて来たんだよ、毎日、あぐらをかいて、台に向ってればいいんだ」

「そう馬鹿にしたもんじゃアないや、ね」と、おやじはあたまを撫でた。

「御馳走をたべたら、早く帰る方がいいよ」と、吉弥も笑っている。

おかしくないのは僕だけであった。三人に酒を出し、御馳走を供し、その上三人から愚弄されているのではないかと疑えば、このまま何も言わないで立ち帰ろうかとも思われた。まして、今しがたまでのこの座敷のことを思い浮べれば、何だか胸持ちが悪くなって来て、自分の身までが全くきたない毛だ物になっているようだ。香ばしいはずの皿も、僕の鼻へは、かの、特に、吉弥が電球に「やまと」の袋をかぶせた時の薄暗い室の、薄暗い肌のにおいを運んで、われながら箸がつけられなかった。

僕の考え込んだ心は急に律僧のごとく精進癖にとじ込められて、甘い、楽しい、愉快だなどというあかるい方面から、全く遮断されたようであった。