Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たんでき

耽溺

岩野 泡鳴

Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme

Aozora Bunko

「そんな物アとっくに直ってる、わ」

「分るもんか? 貴様の口のはたも、どこの馬の骨か分りもしない奴の毒を受けた結果だぞ」

言っておかなかったが、かの女の口のはたの爛れが直ったり、出来たりするのは、僕の初めから気にしていたところであった。それに、時々、その活き活きした目がかすむのを井筒屋のお貞が悪口で、黴毒性のそこひが出るのだと聴いていたのが、今さら思い出されて、僕はぞッとした。

「寛恕して頂戴よ」と、僕の胸に身を投げて来た吉弥をつき払い、僕はつッ立ちあがり、「おッ母さんにそう言ってもらおう、僕も男だから、おッ母さんに約束したことは、お前の方で筋道さえ踏んで来りゃア、必らず実行する。しかしお前の身の腐れはお前の魂から入れ変えなけりゃア、到底、直りッこはないんだ。――これは何も焼き餅から言うんじゃアない、お前のためを思って言うんだ」

怒りはしたものの、僕は涙がこぼれた。それとなく、ハンケチを出して目を拭きながら座敷を出た。出てからちょっとふり返って見たが、かの女は――分ったのか、分らないのか――突き放されたままの位置で、畳に左の手を突き、その方の袂の端を右の手で口へ持って行った。