Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
顔の痩せが目に立って、色が真ッ青だ。僕は、これまでのことが一時に胸に浮んで、ぎょッとせざるを得なかった。
「馬鹿ッ!――馬鹿野郎!」車を下りる妻の権幕は非常なものであった。僕が妻からこんな下劣な侮辱の言を聴くのは、これが初めてであった。
「………」よッぽどのぼせているのだろうから、荒立ててはよくないと思って、僕はおだやかに二階へつれてあがった。
茶を出しに来たおかみさんと妻は普通の挨拶はしたが、おかみさんは初めから何だか済まないというような顔つきをしていた。それが下りて行くと、妻はそとへも聴えるような甲高な声で、なお罵詈罵倒を絶たなかった。
「あなたは色気狂いになったのですか?――性根が抜けたんですか?――うちを忘れたんですか? お父さんが大変おこってらッしゃるのを知らないでしょう?――」
「………」僕は苦笑しているほかなかった。
「こんな児があっても」と、かの女は抱き児が泣き出したのをわざとほうり出すように僕の前に置き、
「可愛くなけりゃア、捨てるなり、どうなりおしなさい!」
「………」これまで自分の子を抱いたことのない僕だが、あまりおぎゃアおぎゃア泣いてるので手に取りあげては見たが、間が悪くッて、あやしたりすかしたりする気になれなかった。