Japanische Klassiker mit Furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.483 Zeichen · 41 Bildschirme
どっちにしても、旧紙幣だから、反古同然だ」
「どうしてまたこんな所へ入れて忘れたんだ」
「前の細君が生きてた頃に入れたのだから、忘れる筈だよ、実はあの頃、まだ競馬があったろう」
「うん、ズボラ者の君が競馬だけは感心に通ったね」
「その金はその頃競馬の資金に、細君に内緒で本の間へかくして置いたんだ。あいつ競馬というと、金を出さなかったからね」
「たった百円か」
「いや、あっちこっち入れて置いたから、探せばもっとある筈だ。旧円の預け入れの時想いだしたんだが、どの本に入れて置いたのか忘れてしまったから、探すのはやめた。いちいち探してると、朝まで掛って、その間原稿は書けんからね」
「しかし、奥さんにそう言って、探して貰えばよかったに」
「原稿を書いてる傍で、ごそごそ本をひっくりかえされるのは、仕事の邪魔だと思ったので、それもよしたよ」
「君のことだから、合服のポケットなんかに旧円がはいってやしないか。入れ忘れたままナフタリン臭くなってね」
「そうだ。そう言われてみると、はいってるかも知れんね」
と、済ました顔で、
「――以前は、財布を忘れて外出して弱ったものだが、しかし、喫茶店なんかのカウンターであっちこっちポケットを探っているうちに、ひょいと入れ忘れた十円札が出て来たりして、助かったことが随分あったよ」