Japanische Klassiker mit Furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.483 Zeichen · 41 Bildschirme
鬼
一
はじめのうち私は辻十吉のような男がなぜそんなに貧乏しなければならぬのか、不思議でならなかった。
人は皆彼のことを大阪人だと言っている。大阪生れだという意味ではない。金銭にかけると抜目がなくちゃっかりしていると、軽蔑しているのである。辻という姓だから、あの男は十にをかけたような男だと、極言するひとさえいる位だ。
それはひどいと私はそんな噂を聴いた時思った。しかし、彼の仕事振りを見ていると、やはり金銭のために堕落しているのではないだろうかと、思われる節がないではなかった。
彼が風変りな題材と粘り強い達者な話術を持って若くして文壇へ出た時、私は彼の逞しい才能にひそかに期待して、もし彼が自重してその才能を大事に使うならば、これまでこの国の文壇に見られなかったような特異な作家として大成するだろうと、その成長を見守っていたのだが、文壇へ出て二三年たたぬうちに、はや才能の濫費をはじめた。
達者で、器用で、何をやらせても一通りこなせるので、例えば彼の書いた新聞小説が映画化されると、文壇の常識を破って、自分で脚色をし、それが玄人はだしのシナリオだと騒がれたのに気を良くして、次々とオリジナル・シナリオを書いたのをはじめ、芝居の脚本も頼まれれば書いて自分で演出し、ラジオの放送劇も二つ三つ書きだしているうちに