Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
俄然、ミサ子は家出して了った。それも夜中にである。勿論彼の女は私の室に臥なかった。私は十二時頃一度目覚めて、泣いている彼の女を台所迄呼びに行った。すると驚いた事に、彼の女はそこの板の間に自分丈の布団を布いて臥ていたのである。顔は蒼白になり、息づかいが荒く、何か強い苦痛を耐えているように、額へ水を浴びたと思われる程汗をかいているのであった。おお私はもう此の先を話せない。
「畳の方へお行き、私は何とも思ってはいないよ。母の事は許して呉れてね、さあ、冷えない方へ……」やっと私は囁いたのである。
「私を女中以上に取扱ってはいけません……ああ身分が違う……私は悪い所から出て来た女です……」彼の女は悲しさで歯を喰いしばり、漸くに之丈を口走って眼を閉じて了った。
「その儘で沢山だ! 構わないが好い!」他の室で、未だ覚めていたらしい母が口を入れた。私は母親に大変な孝行な質――自分で云うのは可笑しいが、何んな曲った事でも母の命令なら従うように生れついた男――であった。それも、此の場合では大きな過誤の一つとなったのである。そして私は私の心を噛んでいるのだ。
私は労れ切って、悪い夢の中に一夜を明した。