Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなこのちんじゅつ

花子の陳述

豊島 与志雄

Lesen Sie 花子の陳述 (はなこのちんじゅつ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.726 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「わたしは、自分の生い立ちの記を書いているんです。生れてから今日までのことを、細かく書き留めておくつもりです。それが、いくら書いても書いても、なかなか書きつくせません。出来上ったら書物にするつもりですけれども、書いているうちにも、一日一日と日がたってゆくし、そしてわたしは生きてゆくし、書くことがたまりますから、いつ出来上ることやら、見当がつきません。」

そういう風に言いますと、明日という日が無くならない限り、いつまでも出来上らないに違いありません。けれど、美津子さんはまた別なことを言い出しました。

「ねえ、おばさん、人間の記憶というものは、ばったりといつ無くなるか分りませんよ。中途で断ち切れてしまうことがありますよ。わたしはそれが恐ろしいんです。だから、記憶のあるうちに、書き留めておくことが大切です。おばさんも、今のうちに、生い立ちの記を書いておかれた方が宜しいですよ。花子さんにも、その外のひとにも、話して聞かせたいようなことが、たくさんおありでしょう。それも、記憶が消え失せてからでは、もう駄目じゃありませんか。だから、今のうちに書き留めておいてごらんなさい。