Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
「あなた。もう歩けないわ。私。」と鼻をならして、「手でも曳いて頂戴なねえ、不実よ。」と突如懐手して歩いている慶三の袖口へ手を入れた。
慶三は真昼間の往来とて、少し面喰って四辺をきょろきょろ見廻したが、坂地の道路が広いだけに、通行の人は誰も気のつくものがないらしいので大きに安心して、じっと袖の中で千代香の手を握りながら、
「真直に行けば伝通院前だが、あの辺じゃ家をさがしたって仕様がないから、電車に乗って江戸川か牛込辺まで出て見よう。」
二人は大曲で下りた後江戸川端から足の向く方の横町へとぶらぶら曲って行ったが、する中にいつか築土明神下の広い通へ出た。鳥居前の電車道を横ぎると向うの細い横町の角に待合の燈が三ツも四ツも一束になって立っているのが見えて、その辺に立並んだ新しい二階家の様子なぞ、どうやら頃合な妾宅向の貸家がありそうに思われた。土地の芸者が浴衣を重ねた素肌の袷に袢纏を引掛けてぶらぶら歩いている。中には島田をがっくりさせ細帯のままで小走にお湯へ行くものもあった。箱屋らしい男も通る。稽古三味線も聞える。互に手を引合った二人は自然と広い表通よりもこの横町の方へ歩みを移したが、すると別に相談をきめたわけでもないのに、二人とも、今は熱心にこの土地の貸家札に目をつけ始めた。