Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
慶三は箱根に行こうが塩原に行こうが到底こんな好い心持のお湯へは入れまいと思った。何にしろ半日ほど歩いて能く運動した後、女と一緒にぐっすり一寝入してその汗ばんだ身体を湯の中へつけた時には、五体の節々のみか生命も共に延び延びしたようで、慶三は幸福と云おうか愉快と云おうか、ただもう夢のような気がした。それから二階へ上って来るとぐうぐういう程腹のすいた処へ晩餐の熱燗。これがまた何うも云いようのない味を覚えさせるので、彼は女房や子供の事また店の事までその瞬間は全く忘れてしまって、心の中にはこれから先毎晩こういう風に千代香を囲者にしてからの楽しさのみが、却て切ないほど果てしもなく想像されるのであった。慶三は二、三杯熱いのを続けざまに引掛けると、既に恍惚たる精神は更に淘々然とし、入湯して柔かくなった身体は足の指手の指の先まで何処ということなく一体にむず痒いように慾情の震動を伝え出すので、到底慶三は妾宅へ引移の準備が出来るまで、このままぼんやり待っては居られないような気がした。彼は待合の内儀を呼上げ妾宅で使う女中の周旋を頼むのみか、万事新世帯に入用な品物を買入れる事まで何くれとなく依頼したのであった。