Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
尤も枕は女のもの一ツしか見えなかったけれど、その傍に置いた煙草盆には灰吹から火入まで一ッぱいに敷島の呑さしが突さしてあった。
慶三は矢庭に掛蒲団を剥ぎのけた後、眼を皿のようにして白い敷布の上から何物かを捜し出そうとするらしく稍暫く瞳子を据えた後、頻に鼻を摺付けて物の臭でもかぐような挙動をした。そして更に手をば蒲団の下に突込んで隈なく何かをさがし出そうとしたらしかったが、しかしどれもこれも皆思うような充分の証拠を握ることが出来なかった。慶三はその場にどっしり胡坐をかき大きな息をついたが、また何か急に思付いたように立上って、先押入の襖を明けてその中を窺った後、次には窓際から頸を差伸して頻に下の様子を窺おうとした。
格子戸の明く音がして外から帰って来たらしいお千代の声、それをば「奥さん。」と急に制するような老婢の声がしたなり後は火の消えたようにしんとして仕舞った。慶三はどうにかして二人の様子、二人の密談を窺おうと逆立するまでに頸と半身を窓の外に差出したが、八月の西日が赫々とさし込む台所には水道の栓から滴る水の音が聞えるばかりである。仕方なしに今度は梯子段の下口の方へ廻って見たが、矢張同じこと家中はまるで人のいないも同様である。