Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかとのじょなんき

若殿女難記

山本 周五郎

Lesen Sie 若殿女難記 (わかとのじょなんき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.611 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「咳払いは慥かでしょうな」若さまは念を押した。「もしそのとき咳が出ないようなことでもあると敵味方がごちゃごちゃになって」

「黙れその口を閉めろ」紋太夫が側から叱りつけた。「貴様は云われたとおり覚えればいいのだ、むだ言を云わずに申付けられたことを忘れるな、――それからもう一つ、江戸家老の梱方万里という者がなにか言上などと申すかも知れぬ、お人払いなどと申すかも知れぬが、誰がなにを云おうと聞かぬふりをするのだ。いいか」

こうしていよいよ時刻となった。江戸家老の梱方万里はじめ四十二人、若殿の御着御目見なので盃は出ない。松田久弥が名を呼び挙げると、一人ずつ上段の前へ来て辞儀をする、中老以下は二人ずつ一緒である。梱方は六十あまりの白髪の篤実そうな老人で、御前へ出ると眼にいっぱい涙を溜めながら、やや久しく若さまの顔を見あげていた。――この家老は十年まえ世継ぎ争いのとき、大助さま擁立の主唱者で、側用人派のために敗北し、近年まで閑職にいたのであるが、伯耆守が病臥と同時に挙げて江戸家老に任ぜられたのである。こう申せばいま老人の大助さまを見る眼に涙の溢れてくる仔細がお判りなされよう。