Japanische Klassiker mit Furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下) (くさもみじ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.512 Zeichen · 63 Bildschirme
されば渋江氏の蔵書家であった事だけを知ったのは、わたしの方が森先生よりも時を早くしていたわけである。唖々子は二子と共に同行を約したが、その時のわたしには新刊の洋書より外には見たいものはなかったので辞して行かなかった。後三年を経ずして、わたしが少しく古文書について知らん事を欲した時、古書に精通した島田はそのために身を誤り既にこの世にはいなかったのであった。
話は後へ戻る。その夜唖々子が運出した『通鑑綱目』五十幾巻は、わたしも共に手伝って、富士見町の大通から左へと一番町へ曲る角から二、三軒目に、篠田という軒燈を出した質屋の店先へかつぎ込まれた。
わたしがこの質屋の顧客となった来歴は家へ出入する車屋の女房に頼んで内所でその通帳を貸してもらったからで。それから唖々子と島田とがつづいて暖簾をくぐるようになったのである。
もうそろそろ夜風の寒くなりかけた頃の晦日であったが、日が暮れたばかりのせいか、格子戸内の土間には客は一人もいず、鉄の棒で境をした畳の上には、いつも見馴れた三十前後の顔色のわるい病身らしい番頭が小僧に衣類をたたませていた。われわれは一先土間へ下した書物の包をば、よいしょと覚えず声を掛けて畳の方へと引摺り上げるまで番頭はだまって知らぬ顔をしている。