Japanische Klassiker mit Furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lesen Sie 菊千代抄 (きくちよしょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.178 Zeichen · 72 Bildschirme
けれどもやはり彼女には縁の遠いもので、どちらも徒らに煩瑣であり、空疎なものにしか思えなかった。
こうして平静な時期が経過し、菊千代は二十三歳になった。その年の四月の或る夜明け、彼女の全神経を惑乱させるような出来事が起こった。……初夏の気温の高い未明の寝所で、菊千代は叫び声をあげて眼をさました。夢だったと思い、起きようとしたが、関節や筋がばらばらにほぐれたようで、身うごきすることもできない。それだけではなかった。夢の中でうけた無法な暴力が、自分のからだの一部にまだ残っていた。その一部分に受けた暴力が現実であるかのように、彼女の意志とは無関係なつよい反応を示している。そしてそれは全身を縛りつけ、痺れさせ、陶酔にまでひきこんでいった。
この夢と、夢によって起こったからだの反応とが、なにを意味するか。おぼろげではあるが菊千代は理解することができた。そして理解した刹那に激しい絶望的な自己嫌悪にうちのめされ、神経発作を起こして泣き叫んだ。……屏風を隔てて寝ていた松尾が、びっくりしてはいって来た。とのいの間からも侍が来ようとしたそうである。それほど異常な叫びだったのだろう。