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Japanische Klassiker mit Furigana

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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Lesen Sie 菊千代抄 (きくちよしょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.178 Zeichen · 72 Bildschirme

Aozora Bunko

五

こう呟きながら、ぞっと身を縮めて、さらに菊千代は思いだすのであった。彼女はこれまで常に半三郎と相撲を取り、柔術の稽古をした。彼に投げられ、組合って倒れ、激しく押えこまれたとき、彼女は一種の強い快さを感じた。それで好んで彼ひとりを相手に選んだ、彼でなければその快さは味わえなかったから。……けれどもそのとき半三郎は知っていたのだ。自分が女であるということを、知っていて自分をあのように組みしき全身で押えこんだのだ。

「――ああ、あ、どうしよう」

菊千代は両手で顔を掩って呻く。それを思いだすたびごとに、忿怒と羞恥とのいりまじった、身を裂かれるような烈しい感情におそわれ、顔を掩って呻くのであった。

五

父は案外はやく弟が生れるかもしれないと云った。それにはやはり根拠があったものとみえ、年があけるとまもなく男の子が生れた。生母はのちに清樹院といわれた側室で、この人が貞良の生涯よき伴侶となったのである。生れた子は亀千代と名づけられたが、成長して父の跡を継いだ越後守貞意は彼である。

弟が生れたということを聞いてから、菊千代は男として生きる決心がついた。そうして二月はじめの春寒というにふさわしい、ひどく凍てる日のことであったが、彼女は中屋敷の書院へ出て半三郎を呼び、人ばらいをした。