Japanische Klassiker mit Furigana
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きくづきよ
菊月夜
山本 周五郎
Lesen Sie 菊月夜 (きくづきよ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.129 Zeichen · 32 Bildschirme
信三郎は大目附役所の一室に引取ってある小房をたずねた。……小房はもう※(「にんべん+扮のつくり」、第3水準1-14-9)した姿ではなかった、疋田の絢子から送られた衣服を着け、髪も櫛けずって、あの頃の清楚な小房にかえっていた。
「久しぶりでお眼にかかります」信三郎は相対して坐ると、感動を抑えた声でしずかにそう云った。
「……御一家の御不幸についてはなにも申しますまい、あなたのご健固がせめてもの祝着です、ご苦労だったでしょう」
「ありがとう存じます、あなた様にもこのたびはお骨折りでございました、お望みどおりに納りましたそうで、おめでとう存じます」
「あなたのお蔭です、いや本当です、……ご尊父が忠左衛門を斬ろうとなすった事実、斬奸状の写し、この二つが無かったら手の着けようがありませんでした、ご尊父が死んでくだすったお蔭です、あなたが牢舎の苦しみに耐えてくだすったお蔭です」
「それでは父の死がお役に立ったのでございますか……」小房の眼にふつふつと涙が溢れてきた、
「わたくしのことなどはともかく、父の死がお役に立ったのでございますか、……うれしゅうございます、それで父も瞑目いたしましょう、信三郎さま、うれしゅうございます」