Japanische Klassiker mit Furigana
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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme
左の眉のところが切れて、血がふきだしたときの驚き。だが参吉は怒らなかった、自分で傷の手当をしながら、なんでもない、心配しなくってもいいよ、と云ってくれた。
――人間の段が違うんだな。
繁次はそう思った。人の悪口を云うのに銭はかからない、とあいつは云ったが、長屋の人たちが悪く云うには理由がある。おれだってあんな女はいやらしいし、あいつだって好きにはなれない筈だ。朝っから白粉の匂いをぷんぷんさせて、だらしのない恰好をしている女なんぞ、あいつだってがまんがならないに違いない、けれどもあいつはそんなけぶりもみせなかった。
――ああいうのを十万人に一人っていう人間かもしれねえな。
繁次は十三歳の頭でそう思った。
田原町と黒船町はわりに近いので、月に三度か五度くらい、参吉は長屋へあらわれた。たいていは使いに出たついでのことで、繁次は「指定」へいっているから殆んど会わなかったが、妹のおゆりや向うのおひさからよくそれを聞いた。ことにおひさは、参吉のことになるとむきになり、彼の云った言葉や、どんな顔つきをしたか、などということまで、詳しく覚えていて繁次に告げた。
「あの人にお土産を持って来るのよ」