Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme

Aozora Bunko

九

九

「どうしたの」と女が云った、「ちっともあがらないじゃないの、お口に合わないんですか」

「おめえに一ついこう」

「あたしだめなの」と女が云った、「このうちはやかましいのよ」

繁次は盃を出し、女は酌をした。

――本所らしいな、ここは。

彼は注がれた盃を持ったまま、店の中を眺めまわした。天床に八間が二つ、木口の新しい、小ぎれいな店の造りを明るく照らしている。白磨きのがっちりした飯台が四つ、二列に並べてあり、腰掛も樽ではなく、よく枯らした杉の厚い板で、一人ずつ座蒲団が置いてあった。もうおそいのだろう、客はまばらで、板場へ通じる暖簾の奥も静かになっていた。

「ここは本所か」と繁次が訊いた。

「その次はあたしの名でしょ」と女は云った、「あたしおきぬ、どうぞごひいきに」

「本所のどのへんだ」

そのとき向うで「きぬちゃん」と呼んだ。三人の客の相手をしていた女中である、おきぬは「ちょっと待ってね」と云って、そちらへ立っていった。

繁次は盃を口へ持っていったが、眉をしかめて口からはなした。

「本所のどこだろう」彼は自分の考えをそっちへそらすように呟いた、「――あれから一軒、二軒、ここが四軒めだな」