Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
であるのに、今忽然起こったのは死に対する不安である。自分はとても生きて還ることはおぼつかないという気がはげしく胸を衝いた。この病、この脚気、たといこの病は治ったにしても戦場は大なる牢獄である。いかにもがいても焦ってもこの大なる牢獄から脱することはできぬ。得利寺で戦死した兵士がその以前かれに向かって
「どうせ遁れられぬ穴だ。思い切りよく死ぬサ」と言ったことを思い出した。
かれは疲労と病気と恐怖とに襲われて、いかにしてこの恐ろしい災厄を遁るべきかを考えた。脱走? それもいい、けれど捕えられた暁には、この上もない汚名をこうむったうえに同じく死! さればとて前進すれば必ず戦争の巷の人とならなければならぬ。戦争の巷に入れば死を覚悟しなければならぬ。かれは今始めて、病院を退院したことの愚をひしと胸に思い当たった。病院から後送されるようにすればよかった……と思った。
もうだめだ、万事休す、遁れるに路がない。消極的の悲観が恐ろしい力でその胸を襲った。と、歩く勇気も何もなくなってしまった。とめどなく涙が流れた。神がこの世にいますなら、どうか救けてください、どうか遁路を教えてください。