Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
すると、その叫び声はいよいよ高くなりますし、誰か来てくれ! と言う声が聞こえますから、来てみたんです。脚気ですナ、脚気衝心ですナ」
「衝心?」
「とても助からんですナ」
「それア、気の毒だ。兵站部に軍医がいるだろう?」
「いますがナ……こんな遅く、来てくれやしませんよ」
「何時だ」
みずから時計を出してみて、「道理だ」という顔をして、そのままポケットに収めた。
「何時です?」
「二時十五分」
二人は黙って立っている。
苦痛がまた押し寄せてきた。唸り声、叫び声が堪え難い悲鳴に続く。
「気の毒だナ」
「ほんとうにかわいそうです。どこの者でしょう」
兵士がかれのポケットを探った。軍隊手帖を引き出すのがわかる。かれの眼にはその兵士の黒く逞しい顔と軍隊手帖を読むために卓上の蝋燭に近く歩み寄ったさまが映った。三河国渥美郡福江村加藤平作……と読む声が続いて聞こえた。故郷のさまが今一度その眼前に浮かぶ。母の顔、妻の顔、欅で囲んだ大きな家屋、裏から続いた滑らかな磯、碧い海、なじみの漁夫の顔……。
二人は黙って立っている。その顔は蒼く暗い。おりおりその身に対する同情の言葉が交される。