Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
白壁の土蔵、樫(かし)の刈り込んだ垣(かき)、冠木門(かぶきもん)、物心がついてから心から憎いと思ったのは、村の物持ちで、どうしてこの身ばかりこう賤(いやし)く、こう憎まれ、こう侮られ、こう打たれるのかと思った。それに、叔父にもよく打たれた。言うことを聞かぬとか、物をよく食うとか、仮寝(うたたね)をするとか、なんぞと言っては、どやしつけられるのがつらさに、ある時などは、村の路(みち)に通りかかった旅商人らしい男に縋(すが)って、どこへでもいい、どんな難儀をしてもいいからいっしょに連れていってくれと頼んだ。村から西に一里ほど、水の少ない石川があって、その向こうに楊樹(やなぎ)の繁茂、路のほとりに一箇の石地蔵、それをお作はいつでも思い出した。追いかけて頼んでも縋っても、旅客は知らぬ顔をしてずんずんと先に行く。初夏の日影は美しく光って、麦の緑が静かな午後の微風に揺(うご)いている。その石川の楊樹のところに来て旅商人はふと立ち留まった。痩(や)せた、顔の青い、髪の延びた男であった。背には風呂敷(ふろしき)包み、紺の脚絆(きゃはん)も長旅の塵埃に塗(まみ)れて、いかにも疲れ果てたというふうであったが――立ち留まって、あとを追いかけてきた田舎娘を待った。