Japanische Klassiker mit Furigana
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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Lesen Sie 藤九郎の島 (とうくろうのしま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.765 Zeichen · 19 Bildschirme
おれは六十二だが、命のあるかぎりは、生きて行くのがつとめだと思っている。また、帰国の望みも捨てない。天地は広大だが、われらの眼の力は、十里の先は及ばない。いまという今は、海原しか見えないが、便り船はついそこまで来ていて、半刻のうちに、帆影を見せまいものでもない。病って死ぬのは、これは定命。国にいようと海にいようと、定命の長さに変りはないが、どれほど行先があるか知れぬおのれの命を、おのれで縮めることだけは、まアやめにしておけ。いい折だから言うが、四人の中ではお前が年下だ。順序からいっても、この先いちばん長く生きるのはお前だから、いまのうちに御船印と浦賀奉行の御判物を預けておく。馬鹿な考えをおこさずに、ふんばりかえって生きられるだけ生き、国へ帰って、たのしく山川の姿を眺めてくれい」
そういうと、寝たまも離したことのない御判物の袋をとって平三郎の首にかけた。
その年の暮、左太夫は腹を腫らし、食物が咽喉を通らなくなって、枯れるように死んだ。
享保十六年の四月、また山焼けがあった。
十七年の正月、土佐の流れ船が着いた。船頭長平、水夫源右衛門、長六、甚兵衛、四人の乗組みで、土佐の甲ノ浦を出帆したところで時化に遭い、五十日も漂い流れてこの島に着いたのである。