Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「何をですか」
「御前の事をさ。藤尾も藤尾でどうかしなければならないが、御前の方を先へきめないと、母さんが困るからね」
甲野さんは手の甲の影で片頬に笑った。淋しい笑である。
「身体が悪いと御云いだけれども、御前くらいの身体で御嫁を取った人はいくらでもあります」
「そりゃ、有るでしょう」
「だからさ。御前も、もう一遍考え直して御覧な。中には御嫁を貰って大変丈夫になった人もあるくらいだよ」
甲野さんの手はこの時始めて額を離れた。洋卓の上には一枚の罫紙に鉛筆が添えて載せてある。何気なく罫紙を取り上げて裏を返して見ると三四行の英語が書いてある。読み掛けて気がついた。昨日読んだ書物の中から備忘のため抄録して、そのままに捨てて置いた紙片である。甲野さんは罫紙を洋卓の上に伏せた。
母は額の裏側だけに八の字を寄せて、甲野さんの返事をおとなしく待っている。甲野さんは鉛筆を執って紙の上へ烏と云う字を書いた。
「どうだろうね」
烏と云う字が鳥になった。
「そうしてくれると好いがね」
鳥と云う字が鴃の字になった。その下に舌の字が付いた。そうして顔を上げた。云う。
「まあ藤尾の方からきめたら好いでしょう」