Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
次に入口の戸に向う。かねて差し込んである鍵をかちゃりと回すと、錠は苦もなく卸りた。
「何をするんだ」
「部屋を立て切った。人が這入って来ないように」
「なぜ」
「なぜでも好い」
「全体どうしたんだ。大変顔色が悪い」
「なに大丈夫。まあ掛けたまえ」と最前の椅子を机に近く引きずって来る。宗近君は小供のごとく命令に服した。甲野さんは相手を落ちつけた後、静かに、用い慣れた安楽椅子に腰を卸す。体は机に向ったままである。
「宗近さん」と壁を向いて呼んだが、やがて首だけぐるりと回して、正面から、
「藤尾は駄目だよ」と云う。落ちついた調子のうちに、何となく温い暖味があった。すべての枝を緑に返す用意のために、寂びたる中を人知れず通う春の脈は、甲野さんの同情である。
「そうか」
腕を組んだ宗近君はこれだけ答えた。あとから、
「糸公もそう云った」と沈んでつけた。
「君より、君の妹の方が眼がある。藤尾は駄目だ。飛び上りものだ」
かちゃりと入口の円鈕を捩ったものがある。戸は開かない。今度はとんとんと外から敲く。宗近君は振り向いた。甲野さんは眼さえ動かさない。
「うちやって置け」と冷やかに云う。
入口の扉に口を着けたようにホホホホと高く笑ったものがある。