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Japanische Klassiker mit Furigana

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むし

虫

江戸川 乱歩

Lesen Sie 虫 (むし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.053 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

丁度貴婦人が厚いヴェイルで彼女の顔を隠す様に、彼は土蔵の厚い壁で、彼自身の姿を、世間の視線から隠してしまいたかったのである。

彼はその土蔵の二階に畳を敷きつめて、愛蔵の異端の古書や、横浜の古道具屋で手に入れた、等身大の木彫の仏像や、数個の青ざめたお能の面などを持込んで、そこに彼の不思議な檻を造りなした。北と南の二方丈けに開かれた、たった二つの、小さな鉄棒をはめた窓が、凡ての光源であったが、それを更らに陰気にする為に、彼は南の窓の鉄の扉を、ぴっしゃりと締切ってしまった。それ故、その部屋には、年中一分の陽光さえも直射することはなかった。これが彼の居間であり、書斎であり、寝室であった。

階下は板張りのままにして、彼のあらゆる所有品を、祖先伝来の丹塗りの長持や、紋章の様な錠前のついたいかめしい箪笥や、虫の食った鎧櫃や、不用の書物をつめた本箱や、その他様々のがらくた道具を、滅茶苦茶に置き並べ積重ねた。

母屋の方は十畳の広間と、台所脇の四畳半との畳替えをして、前者を滅多に来ない客の為の応接間に備え、後者は炊事に傭った老婆の部屋に当てた。彼はそうして、客にも傭婆さんにも、土蔵の入口にすら近寄らせない用意をした。